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Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.2 初恋
彼の───男の目的地であるアパートに着いたのは、午後十時を回った頃。とっぷりと暗く沈んだ空が顔を覗かせる時間だった。
アパートは正面の植え込みからライトアップされ、さながらホテルのような設えだった。
入口は表に一つ。裏に非常用の出入口が一つの計二つ。
ライトアップによって夜でもはっきりと浮かび上がるホワイトの壁は、どことなく上品さを感じさせる。
アパートは五階建てで、部屋は各階に五つありエレベーターはなし。上り下りには入口から入って右側の一番奥にある階段を使う。
男の部屋は三階の真ん中の部屋。
彼が鍵を探している間にサラが見た三階からの景色は素晴らしい眺めだった。絶景と言ってもいい。
アパートの周りの家の明かりも一つ一つ見てとれたし、何より遠くに見える街のネオンが、まるで空の星々を地上に降ろしたかのようにキラキラと輝いて素敵だった。
彼に聞いた話だと、アパートの裏には公園もあるらしい。
鍵が開いて真っ先にサラが部屋に入る。
玄関から入ってすぐ右にトイレと洗面台。左に浴室と洗濯場。
少し進んだ右側にキッチン。そしてその奥の丸々一部屋がリビングとなる。部屋に入ってすぐ右側にキチンと整えられたベッド。
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