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男は呆れたのとしまったという焦りが混ざった複雑な顔をしながら、仕方なしにリビングにある椅子に腰掛けた。
「ふぅ……さてと、自己紹介がまだだったね。俺はハリー。ハリー・クルーガー」
「私はサラ。サラ・フィーラスよ」
「そうか。よろしく。ところでサラ。君はどうしてあんな所にいたんだ?」
「……」
「あ、無理に言わなくてもいいんだ。過去のことなんて他人に話せることばかりじゃないし」
「……ううん。聞いて」
自己紹介も一通り終え、サラは薄々覚悟していた自分の過去───今までに自分に起きた出来事を全てハリーに話した。
聞いているハリーは真剣そのもので、サラの言葉を一言一句逃すまいとしていた。
……全て話し終えた後、サラの予想通り、部屋を深海のような静けさが支配する。
「これが私の今までの生活。……信じられないかもしれないけど……」
「……信じるよ」
「え?だって……」
ハリーの言葉に耳を疑う。
今、「信じる」と?
こんな嘘みたいな常識離れした話を?
「少なくとも、君のその真剣な話し方からして作り話とは思えない。
ただ、いまいちピンとこないのが君の眼だ。君は本当に憎しみだけで人を殺せるのか?」
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