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その温かみを、サラは知っている。
ハリーと、彼と出会った時。それ以前にも、その温もりを感じたことがある。
母親───モリーとの、母子家庭ながらも輝いていたあの日々。寒い季節も不安な夜も、包み込まれた腕の中て、幼い娘は安堵し安眠へと入る。
それは、誰かに守られているという安心感からくるものだった。
端から見ればたったそれだけのことだが、サラにとってはとても重要なこと。
この上なく大切な温もりを、彼(ハリー)は持っている。その極端にお気楽な性格を差し引いても、彼の優しさは揺るがない。
どこか抜けているところも、たとえ今ハリーが重度のロリコンだと発覚しても、今更サラは驚きはしない。
「ありがとう……ハリー……」
「どう致しまして」
しかし───そこで思わぬ邪魔者が乱入してくる。
「……ねぇ、ハリー……」
いつの世でさえも、その時その場所、その雰囲気というものがある。
このお互いをわかり合えたという記念すべき日。
そのいい雰囲気の場を台なしのブチ壊しにしてくれやがったのは───。
「うん?」
「お腹すいた」
───サラの、腹の虫だった。
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