Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.2 初恋

8/43

637人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
その温かみを、サラは知っている。 ハリーと、彼と出会った時。それ以前にも、その温もりを感じたことがある。 母親───モリーとの、母子家庭ながらも輝いていたあの日々。寒い季節も不安な夜も、包み込まれた腕の中て、幼い娘は安堵し安眠へと入る。 それは、誰かに守られているという安心感からくるものだった。 端から見ればたったそれだけのことだが、サラにとってはとても重要なこと。 この上なく大切な温もりを、彼(ハリー)は持っている。その極端にお気楽な性格を差し引いても、彼の優しさは揺るがない。 どこか抜けているところも、たとえ今ハリーが重度のロリコンだと発覚しても、今更サラは驚きはしない。 「ありがとう……ハリー……」 「どう致しまして」 しかし───そこで思わぬ邪魔者が乱入してくる。 「……ねぇ、ハリー……」 いつの世でさえも、その時その場所、その雰囲気というものがある。 このお互いをわかり合えたという記念すべき日。 そのいい雰囲気の場を台なしのブチ壊しにしてくれやがったのは───。 「うん?」 「お腹すいた」 ───サラの、腹の虫だった。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

637人が本棚に入れています
本棚に追加