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当然か。
サラの誕生日は、母・モリーの命日となっていた。
誕生日をむかえる度にあの時の惨劇がサラの脳裏に蘇る。
サラにとってモリーの死はもはやトラウマになっていた。
だがもちろんハリーもそのことを考慮していなかったわけではない。
〔これで<四回目>か……。ふっきれていると思ったが、あまかった……〕
そう。これで四回目。
今日を含めて今まで四回、同じようなことがあった。
それはサラがハリーと暮らし始めて、四回誕生日を迎えたということであって───。
同時に、身を裂くようなトラウマに四回もあっているのだ。
トラウマは脳裏に焼き付き、自我とは関係ないところで怒涛のごとく襲い掛かる姿のない亡霊。
サラの場合、それは凄く特殊なケースなわけで。
何しろ相手の正体が不明な上に、サラは当時まだ幼い八歳だ。
そんな時に、目の前で愛しい母親の死を見れば、嫌でもトラウマになってしまう。
それだけではない。
母親の命が消える時、側に居てやれなかった歯痒さ。守ってあげられなかったという無念。
もっと言えば、それらを実感する時が、よりによって自分の誕生日。楽しめるはずもない。
あらゆる要素が、一塊となってサラを苦しめる。
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