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───ちなみに、シチューはレトルトであり、威張れるような難しい料理ではない。
それに気付かずつけあがっているハリーとムキになっているサラ。この安い劇はしばらく続いた。
夕食後。眠る前にサラは、モリーの言葉を再度思い出していた。
そして、自分の胸の内がまだ熱いことを再確認し、夜の暗い部屋の虚空を見つめながら一つの事柄を思い浮かべる。
〔……そっか……私、出会った時からハリーのことが……………………好きだったんだ……〕
暗がりでほのかに頬が朱くなる。だが、不思議と恥ずかしい気持ちにはならず、むしろ堂々と胸を張って自分には好きな人ができたと自慢してもいいくらい清々しい気分だった。
化け物と呼ばれ蔑まれてきた自分に好きな人ができ、気持ちがときめいている。
それが恋だというのに気付くのに、四年という時間は長すぎた。
そう、それは十二歳の、サラ・フィーラスの、初恋だった。
それからというもの、自分の中の正直な気持ちに気付いてしまったサラは、ハリーと目が合ったり、手と手が触れ合ったりしただけでも、不自然にキョドってしまった。
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