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酷い時は、お風呂に一緒に入るかというハリーの他愛もない冗談に、頭の後にムカつきマークが現れたサラは、危うくハリーの左手を吹き飛ばすすんでのところで、ハリーの左手の中の石鹸を吹き飛ばした。
ハリーはそんなサラを心配したが、以前サラからお人好しすぎると言われたことがあるので、サラから言い出すまで黙っていることにした。
しかしサラにとってはそれが墓穴だった。
せめて「どうした?」と言われたらどんなに楽だったか。
言い出したいのに言い出すことができない。
恋の悩みとは時として苦しいものだということをサラは身をもって体験した。
そんな暗雲のごときもやもやとした気持ちで、お互い無言で過ごす日々が続いた。
だが、苦しいことばかりではなかった。恋の悩みというのはあくまで悩みであり、普通に付き合うことには問題なかったのだ。
何度も何度も。サラは自身の気持ちを整理する。
でもその度に募るのは、一人の女の子としてのドキドキ感だけ。
……こんなにも切なくて、苦しい……。
ハリーは鈍感なのか、心配こそすれ、サラの気持ちには気付いていない。
それがサラの気持ちを余計に煽る。そしてそれが、たまらなくサラの胸を締め付けるのだ。
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