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一言で言ってしまえば、そこにいたサラは、昼間出掛ける時とは全く別の格好で。
───まるで、別人のようだ。
食料を買いに行ったはずなのに、手には何も持っていない。代わりに、細長い五本指には、ギラギラと光る金銀の指輪。手首には高価なジュエルのブレスレット。
外見は子供なのに、かなり似合っている。というよりもどこか、雰囲気に合っている装飾品だ。
艶やかに光る黒い革ジャンに、派手なロゴ入りのシャツ。胸元に輝くアクセサリーは相当高価なものに違いない。
革ジャンに合わせた黒いデニムのスカートに黒タイツで、美しさにより磨きをかけている。
……余計な干渉かもしれないが、その年齢で黒のガーターベルトはどうだろうか?
特定の年齢の人種にはたまらない御利益となりそうだ。
「だから何を言って───」
言いかけて、ハリーは本を床に落とした。いや、落とさざるを得なかった。
落ちる本には目もくれず、ハリーの目の前にいる少女は静かに笑う。
その笑みは酷く冷たく、ハリーは生きた心地がしなかった。まるで暗い鉄の箱に閉じ込められたような感覚にも襲われ、いつの間にか部屋も、冷ややかな空気に満ちている。
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