Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~ episode.2 初恋

23/43
前へ
/266ページ
次へ
一言で言ってしまえば、そこにいたサラは、昼間出掛ける時とは全く別の格好で。 ───まるで、別人のようだ。 食料を買いに行ったはずなのに、手には何も持っていない。代わりに、細長い五本指には、ギラギラと光る金銀の指輪。手首には高価なジュエルのブレスレット。 外見は子供なのに、かなり似合っている。というよりもどこか、雰囲気に合っている装飾品だ。 艶やかに光る黒い革ジャンに、派手なロゴ入りのシャツ。胸元に輝くアクセサリーは相当高価なものに違いない。 革ジャンに合わせた黒いデニムのスカートに黒タイツで、美しさにより磨きをかけている。 ……余計な干渉かもしれないが、その年齢で黒のガーターベルトはどうだろうか? 特定の年齢の人種にはたまらない御利益となりそうだ。 「だから何を言って───」 言いかけて、ハリーは本を床に落とした。いや、落とさざるを得なかった。 落ちる本には目もくれず、ハリーの目の前にいる少女は静かに笑う。 その笑みは酷く冷たく、ハリーは生きた心地がしなかった。まるで暗い鉄の箱に閉じ込められたような感覚にも襲われ、いつの間にか部屋も、冷ややかな空気に満ちている。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

637人が本棚に入れています
本棚に追加