637人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前の少女はサラであってサラではなかった。
いや、サラのはずだが、どこか違う。サラと寸分違わぬが寸分違う少女を前に、ハリーは後ずさりした。
それと同時にサラのような少女は一歩ずつハリーに近づいて来る。
「誰だ君は!?……サラじゃない!?」
しかし目の前にいるのはサラだ。そんなことは、これまで側にいたハリーだって、疑う余地もなくわかっている。
しかし、何かが違う。
その髪型、容姿から瞳の色、喋り方までサラのはずなのに、頭がそれを否定する。
───逃げなければ。ここにいては危ない。
そんな思考を遮るように、少女はハリーの手前で立ち止まり、ハリーが知っているサラの声で、なまめかしいほど魅惑的に囁く。
「ふふ、貴方こそ何を言っているの?さっき自分で言ってたじゃない……………………サラ、って……」
サラはハリーの待つアパートまでの道のりを走っていた。
ハリーをぐうの音も出ないようなメニューの料理を作るため。半ば楽しみながらあれこれレシピを思い浮かべ、目的の材料は全て買い揃えたのだが、偶然通りかかったスーパーで特売セールをやっていたのを発見したのが遅くなった最大の理由だった。
最初のコメントを投稿しよう!