637人が本棚に入れています
本棚に追加
予定よりも多めの買い物をしたサラは重たい荷物を両手に、小走りにアパートへと続く一本道に差し掛かっていた。
日が暮れた頃とはいえ、ハリーの家までの道のりはすっかり暗くなり、街灯がちらほら立っていても十メートル先も見えないほど夜道が続いていた。
〔遅くなっちゃった。ハリー怒ってないかな……。
うぅっ、またあの三つ編みはやだよぅ〕
これほど暗くなってしまい、帰宅が遅くなってしまった今となっては、サラとハリーの二人で決めた門限には完全に遅刻してしまっているものと覚悟した方がいいだろう。
みつあみとは、以前サラがハリーの愛用のコップの二つ目を割ってしまった時、怒ったハリーがサラの髪を無理矢理みつあみにしたことである。
当然ハリーに髪の結び方の知識などなく、その時の髪の痛みならぬ傷みといったらなかった。半日手入れしても直らないくらいだった。
サラの頭には、もはや確定した未来の映像が流れている。ここまで来たら後戻りはできない。サラは決められた道を、死刑台に向かって走っていくしかない。
アパートまでもう少しのとところで、サラは誰かと擦れ違った気がした。何故ならその擦れ違った誰かが、サラに話し掛けたのを聞いたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!