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「裏の公園で待ってるわ」
どこかで、聞き覚えのある、声。
以前、これと似たようなことが、あった。
弾けたようにサラは走り出す。
アパートはすぐそこだが、サラは全速力で走った。
───嫌な予感がする。
アパートの入口に入る。
───嫌な予感がする。
階段を駆け上がる。
───嫌な予感がする。
「ハリー!!!」
バーン、と勢いよく玄関をあけ急いでそのままリビングに入り、電気を点ける。
電灯が点滅し、やがて部屋全体を明るく照らす。
かくして。
嫌な予感は、苦く絶望的な現実を引き寄せた。
サラの両の手から買い物袋が床に落ちる。
膝から崩れ落ちる。
絶望で抱えた頭が真っ白になる。
一瞬何がどうなっているのか、どうなっているのが何なのかわからなくなる。
目の前の現実を受け入れたくない。
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