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こんな哀しいことが繰り返されてはならない。
だって───
こんなに悲しい事は、四年前にもあったのだから。
「い、いや………………!
いやあああぁあああぁぁあああああああぁぁぁああぁあぁああぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!!!」
今まで一番大きな、悲痛な叫び声があがる。
アパート全体に響き渡る慟哭は、夜の静寂を打ち砕き掻き消えていく。
一瞬、人形の展覧会にでも迷い込んだかのような錯覚がサラを襲う。
雰囲気だけでなく、その場の状況が人形の展覧会に酷似していた。
まず殺伐とした空気。
不気味とも思える展覧会の作品が、ショーケースに入って特有の人形美で彩られ飾られている。
そして何より、人形の展覧会なのだから、生きているのは見に来た客だけ。
その場に人に似たモノがあっても、それは生きていない人形なのだ。
───うそだ。
涙が止まることなく、頬を流れていく。
サラの前には今、人形の格好をしたハリーがいる。いや在るといった方が正しいように思える。
何故なら生きているのはサラだけなのだ。
既に冷たく、動かなくなった上半身をデスクに寄りかけたまま、開ききったハリーの黒い瞳が、静かにサラを見つめていた。
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