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あれからどれだけの時間が経っただろう。
あれからどれだけ泣き腫らしただろう。
涙は既に枯れ果て、ついさっきまでかすれていた泣き声も止んでいる。
ふっきれたのか。
───違う。
いくら泣いても何も変わらないと気付いたのか。
───違う。
ここにももういられない。
せめて少しでも長く側にと思い、もの言わぬハリーの傍らにうずくまるサラは───静かに決意した。
『裏の公園で待ってるわ』
耳元にあの言葉がこだまする。
それはいつ言われた言葉だったか。八時間前か。半日前か。
───もう、そんなことはどうでもいい。
決めたのだ。
ゆっくりと膝にうずめた顔を上げる。
私は───。
アパートの裏にある公園は、街灯こそ点いていたものの、不気味な闇と静寂に包まれていた。
公園内にある遊具は、どれもチープで薄汚れていたが、以前は子連れの親がたくさん集まって遊ぶ事でにぎわい、有名だった公園も、今は沈黙を守りきっている。
その公園の中心に、街灯に照らされながらぽつねんと佇んでいるジャングルジムがあった。
錆び付いた遊具はそれぞれが、子供の遊び相手という役目をとうに果たしており、黙して倒壊の時を待つ。
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