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しかし今やそのジャングルジムは、一番上に座っている少女の支配下にあった。既に死んでいるも同然な積年の遊具たちは、その体を静かに横たえ、黙って少女の支配下で伏している。
それは無機物として黙っているのではなく、寧ろ暴君によって力で押さえ付けられ、蔑ろにされている状態に近かった。
夜の闇は濃い。
しかしその闇よりも更に深く、濃いオーラが、この公園には充満していた。
『生きとし生ける物全て、自分の前に存在することは許さない』。話さずともそんな雰囲気だけはビリビリと、空気を伝って広がっている。
その公園の半径二百メートル周辺に住む人間は、家の中に居るにも関わらず、例えようのない悪寒に襲われてしまっていた。
元凶である深夜の公園。
仮に、ここに一般人数人が足を踏み入れたとする。
するとどうだろう。ある者は突然頭を押さえて発狂し、またある者はあまりの悪寒に吐き気をもよおし、その場で膝をついてて嘔吐する。それこそ胃の中だけでなく、内臓全てを吐き出しそうになるほどに。
そんな醜悪な場所。およそ地獄に近い空間に、サラが歩いてやってきた。半分俯いた顔は上げることなく、眼だけはジャングルジムの上にいる少女を捉らえていた。
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