637人が本棚に入れています
本棚に追加
ウィラと生き残った男の視線が合う。
途端、男は狂ったように、いや、事実、発狂しながら一目散にウィラの側から離れていった。
「ひっ!た、助けてえええ~~~~!!!!母ちゃ~~~~~ん!!!!!!」
泣き喚きながら男が公園の入口まで辿り着いた時だった。
逃げた男の体は、まるでそこに見えないワイヤーが張ってあったかのように縦横十字に切断され、男は絶命した。
「───!」
サラの眼が、驚愕に見開かれる。今逃げて行った男は、何の前触れもなく体をひきちぎられたように見えた。
比喩ではない。本当に「ひきちぎられたように見えた」のだ。
それは、サラにとって何度か見たことのある光景だった。以前、路頭に迷っていた頃、ほんの出来心で試してみたことがある。
自分の力は、一体どのように生き物を壊すのかという、とても些細な好奇心から来る実験だった。
手始めに、手頃な獲物を見つけると、憎んだ後に曲がれと念じてみた。結果、幸せそうに歩いていたカップルは破裂することなく、生きていた時よりも密着した変なオブジェになってしまった。
「ウフフッ、母ちゃーんだって、可愛いわね。
役に立たない男だったけれど、死に際くらいは鮮やかじゃないとねぇ」
最初のコメントを投稿しよう!