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有り得なかった。
眼は確かにウィラを捉らえ、ありったけの憎しみを込めたというのに。
ウィラには傷一つなく、何事もなかったかのように、平然とした顔で砂煙から生還したのだ。
もはや驚愕というにはあまりにも有り得ない状況にサラはまったく身動きできなかった。
「あなたの私に対する憎しみってその程度だったんだ?いいわねぇ。
……でもね、私のあなたに対する憎しみは、こんなものじゃないわ!」
ウィラが激昂の表情を浮かべたかと思うと、サラの下腹部に激痛が走り、サラの小さな体は二十メートルばかり後方に吹っ飛んだ。
サラの体が何度か地面にバウンドし、ごみくずのように地面に転がる。
あちこち擦りむき、服は破け汚れて、あまりの痛みにサラは息ができなかった。何とか仰向けになると、口から吐血した。
サラが転がった跡が地面に深々と爪痕を残している。
服は所々破け、体のあちこちは傷で埋めつくされ、骨も間違いなく背骨とどこかが折れていた。
血がとめどなく流れ、息は少しできるようになりはしたが、それでも、今のサラの状態は、間違いなく致命傷だった。
そんなサラの状態など知ったことかといわんばかりに、ウィラは話し続ける。
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