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「憎しみを抑えることで、対象を殺さずに傷つけることができるわ。
……痛む?痛むでしょうね。……でも、私が受けた傷と比べるとかわいいものね」
怒りを込めた声でウィラは言う。
その一言一言には、はっきりとした深い憎しみが宿っていた。
ウィラが歩み寄ってくる。
動かなければ、反撃しなければ殺される。
動け、私の体───自分に何度も何度も言い聞かせるが、激痛が邪魔をする。
上ってくる嘔吐感が思考を喰い散らかす。
───痛い。
生まれて初めて味わう眼の力による痛み。
いや、憎しみを与え振り撒いていた自分が、初めて受けた憎しみ。
これまでサラは、自身の内にある溢れんばかりの、自分でも制御できない憎しみを相手にぶつけてきた。
そんな自分が今、それらを更に上回る憎しみを、これでもかとばかりに炸裂された。
そこにはこれまでに味わったことのない心の傷みや肉体の痛み。そしてサラも知らない"いたみ"があった。
敢えて名付けるとしたら、これは───"慟哭"、───だろうか。
ウィラの眼から感じ取れたのは、この世の全てを覆うような憎しみ。圧倒的なまでの負の感情の激流だ。
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