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「だぁめ。今からじゃ予防接種が間に合わない。第一、刹那はパスポート切れてるだろ」
緑にぃは俺の鼻をぴしっと指で弾き、駄々っ子をあやすように笑った。
結局、緑にぃは端から全て計算ずくで、俺がくっついて行く余地なんかないのだ。
「緑にぃのあほっ、意地悪っ」
握り締めた枕で、緑にぃの頭をばしばし叩く。
「こら、地味に痛いって。お前の枕、結構しっかりしてるんだから」
「あうぅー、苛つく!」
「機嫌直せよ。土産買ってくるからさ」
緑にぃは枕を受け止め起き上がると、枕ごと俺を抱き締め、宥めるように、額やこめかみに柔らかなキスを落とした。
それでもむっつりと膨れたまま、玄関まで見送った俺の頭をくしゃくしゃ撫で、
「一週間なんて、あっと言う間さ。すぐに帰って来るからな」
緑にぃはいつもの朗らかな笑みを浮かべ、いつものように軽く手を振り出て行った。
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