143人が本棚に入れています
本棚に追加
『固まるお前を見て、俺達は一緒に居すぎたんじゃないかと思った』
そうだな。俺達、いつも一緒だった。ずっと近くに居すぎて、だから気づかなかったんだ。
こんなにも、失えない存在だったなんて……
もっと早く俺が気づいていれば、今もまだ俺達はあのまま何事もなく、一緒にいられたのかな。
緑にぃは今も変わらず、俺の左側を埋めてくれていたのかな。
『だから俺は、旅に出ようと思った。少し離れてみようと思ったんだ』
離れすぎだよ。いったいどこまで行ってんだよ。
俺を置いて、どこまで……
レンズ越しに見つめる精彩を欠いた視界の中で、焼けたアスファルトが途切れ、むき出しの土に変わる。
鬱蒼と繁った木々に囲まれ、黒く湿った土と下草。それをゆっくりと踏み締め、奥へと足を進めた。
最初のコメントを投稿しよう!