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あの約束を交わした日と変わらず、林の中はうるさいほどの蝉の鳴き声で、あふれていた。
倒れた草や木、張り出した根を踏み越えながら、通い慣れた道のりをひたすら歩く。
額を伝い落ちる汗も、腕をひっかく枝も、俺の気持ちを乱しはしない。
『刹那。答えは見つかったか?』
ああ、見つかったよ。とっくに見つけた。
答えは最初から俺の中にあったんだ。見つめる勇気がなかっただけで……
『帰国したら、お前の返事を聞かせて欲しい』
聞かせてやるよ。いくらだって……
うんざりするほど聞かせてやる。
もういいって言うまで、何度だって言ってやるよ。
『あの約束の場所で待ってる。お前が来るまで……』
腕で枝を払いのけると、いつかと同じ唐突さで、急激に視界が開けた。
白い入道雲の沸き立つ、青い蒼い空。
鏡のように凪いだ、青い碧い海。
サングラスを外した目に、圧倒的な迫力で飛びこんでくる青い世界。
「ずっと、ここで待ってたんだな」
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