突然の訃報

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   遅い。時計の針は昼を周っている。  もうとっくに、帰って来ていい時間なのに。連絡ひとつして来ないで、何のろのろしてんだよ。  メールも電話も応答がない。俺のケータイは沈黙したままだ。  苛々(いらいら)と時計を睨みつけたその時、家の電話が鳴った。 「はいはい。もしかして緑音かしら」 「だったら代わってくれよ」  絶対怒鳴り飛ばしてやる。拳を握り締めて見つめる先で、電話に出た母さんの様子がどこかおかしい。  (いぶか)って眉を寄せた俺を、受話器を置いた母さんが振り返った。 「どうしたんだよ……」  知らず声が微かに震えた。予感、のようなものがあったのかもしれない。最悪な虫の知らせってやつが。 「母さん?」  蒼白になった人間の顔を、俺は初めてこの目で見た。  血の気が失せた肌は紙より白く、青い。月光に照らされた雪に似ている、と思った。  どこかで警鐘が鳴っている気がするのに、なぜか遠い火事を眺めるような感覚で、母さんの唇を見つめていた。 「刹那。緑音が……緑音の乗った飛行機が、上空で大破して海に……海に墜ちたって――!!」
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