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なんだって? 緑にぃの飛行機が墜ちた?
どういうことだよ、それ……意味分かんねぇよ。
どうなってんだよ。
耳の奥で荒々しくドアを叩く音が響く。
誰だよ。うるせぇな。やめろ。
耳を塞いでも鳴り止まないその音が、こめかみを蹴りつける自分の鼓動だと、数瞬の後ようやく気づいた。
なんで、俺の心臓こんなにばくばくしてんだ? 俺は緑にぃを待ってただけなのに……緑、にぃ……
「嘘、だ。嘘だあぁぁっっーー!!」
自分が絶叫したのにも気づかなかった。
背骨を鋭い悪寒が駆け下り、全身に震えが走る。
「嘘だ、嘘だ、嘘っ……」
目に焼きついた大好きな緑にぃのあの優しい笑顔が、どんどん霞んでいく。
捕まえようととっさに伸ばした手が、馬鹿みたいに泳いで空を切った。
「緑音……どうしてこんな――」
泣き崩れる母さんを前に、俺はただただ呆然と立ち尽くしていた。
あたり前に存在していたものを、なんの前触れもなく奪われる。
その現実になす術もなく打ちのめされ、だが受け入れることなど到底出来ず、俺は冷えていく指先の痛みだけを感じていた。
嘘だよな? 緑にぃ……
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