【プロローグ】

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 冷たい雨が降る十一月。  今日は、わたしの十六回目の誕生日。  久しぶりにそろったパパとママの顔を見て、わたしは一番のプレゼントだと喜んでいた。 「帰ってちぃの誕生会しような」  パパの言葉に、わたしはうれしくなる。  小さいころからパパはわたしのことを「ちぃ」と呼んでくれる。  小さくってかわいいから「ちぃ」なんだよ、と説明してくれたけど、今のわたしは、昔のように小さくない。  助手席でママが微笑んでいる。  お金はたくさんはないけど、パパとママがいて、ささやかな幸せ。  外は冷たい雨が降っているけど、車の中は温かくて、うれしくて。  わたしの横に置かれたケーキの箱に微笑む。  小さいけれど、とパパは照れくさそうにわたしにケーキの箱を渡してくれた。  その気持ちがうれしかった。  わたしは、パパのような人と結婚したいって思っていた。  かっこよくて、優しくて、頭がよくて。
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