2311人が本棚に入れています
本棚に追加
冷たい雨が降る十一月。
今日は、わたしの十六回目の誕生日。
久しぶりにそろったパパとママの顔を見て、わたしは一番のプレゼントだと喜んでいた。
「帰ってちぃの誕生会しような」
パパの言葉に、わたしはうれしくなる。
小さいころからパパはわたしのことを「ちぃ」と呼んでくれる。
小さくってかわいいから「ちぃ」なんだよ、と説明してくれたけど、今のわたしは、昔のように小さくない。
助手席でママが微笑んでいる。
お金はたくさんはないけど、パパとママがいて、ささやかな幸せ。
外は冷たい雨が降っているけど、車の中は温かくて、うれしくて。
わたしの横に置かれたケーキの箱に微笑む。
小さいけれど、とパパは照れくさそうにわたしにケーキの箱を渡してくれた。
その気持ちがうれしかった。
わたしは、パパのような人と結婚したいって思っていた。
かっこよくて、優しくて、頭がよくて。
最初のコメントを投稿しよう!