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「あーもう、いい加減に笑い止んでくれないかな!」
いつまでもクスクス笑う私達にセシルは少し切れ気味に言った。
「あはは、セシルに嫌われたら堪ったものじゃないですね。この辺で止めておくことにします」
そしてシモンはセシルの言葉に従った。
私もなんとか今だに出るクスクス笑いを押し込んだ、と。
―グゥ~ッ
「!!??」
盛大に鳴ったお腹の音。
それは部屋に響くほどに大きなもので。
「―フッ……アハハハ」
予想した通りセシルの笑い声が後に続いた。
顔面がみるみる内に熱をもっていくのを感じる。
私は恐る恐る残りの二人を見た。
ノアの方はどうやらボーッとしている。
心ここに在らずといった感じだ。もしかしてさっきから話に参加していないのは単にそうしていたからだろうか。
(は、反応が無いのも逆に淋しい……)
そう思った後、シモンに目を向ける。
目が合うと彼は優しく微笑みながら言った。
「そういえば食事がまだでしたね。さっきここに持って来たのがまだあるので温めればすぐに食べられるでしょう」
「って、ちょっと待って兄さん。なんで僕の時はあんな笑ってたのにこの子だと笑わないのさ!」
言って、食事の盆を立って取りに行くシモンを見ると、ひとり笑っていたセシルが不満そうに抗議した。
「人にとって食事は大切な事なので」
「…………。
答えになってないし」
セシルはがっくりと肩を落とした。
「まあ、そう落ち込まないで。
――そうそう、アリアさん。もう私達が魔術師だって知ったんだから目の前で使っても大丈夫ですよね」
シモンは机の隅に置いていた鍋を私の前に置く。
そして――……
―パチンッ
すぐ傍で指を鳴らす音が響いた。
同時にブワッと一瞬鍋の周りの空気が温かくなる。
「――さぁ、どうぞ遠慮なく召し上がって下さい」
シモンが驚く私の前の鍋の蓋を開ける。
―中には山菜のたっぷり入ったお粥が、温かで美味しそうな湯気を立ててあったのだった。
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