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「――……っ!?」
目が覚める。
しばらく頭が混乱していたが、周りを見回していつも寝ている場所と変わらない事を確認すると、目覚めた時はドクドクと早鐘を打っていた心臓は段々と落ち着いていった。
ベッドから起き上がる。
どうやら寝汗をかいていたみたいで、服が纏わりつく感覚が気持ち悪い。
私は替えの洋服を取りに部屋に備えつけてある箪笥のもとへと向かった。
――魔術師たちと暮らし始めてから約一月の時間が流れた。
その間も主にシモンが甲斐甲斐しく世話をしてくれて、私の体調は完璧になった、と思う。
ノアは相変わらず無口で何を考えているのかも分からず、セシルは……あれ以来脅しの様な行為をしてこなかった。
元勇者のロダンはあの時、別れた時に言っていた通り毎日通って来ていた。
――山道を行ったり来たりしていて疲れないのだろうか。
そんなこんなで私はこの暮らしに馴染みつつあり、最初は彼らといると緊張ばかりしていたが今ではほとんど普通に接せられるほどになった。
そして心にも大分余裕が出てきたのか、私は夢さえ見るようになっていた。
だけど、その夢こそ今の悩みとなっている。
――毎晩見るのは一人になった時の夢。
暗くて冷たい空間。
永遠に続きそうな孤独感。
過去の夢を繰り返し、繰り返し見ていた。
――ああ、私はまた同じ夢を見るのか。
再び沈んだベッドの中、涙が一筋溢れた。
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