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「―大丈夫ですか、アリアさん?何だかフラフラしているみたいですが……」
澄んだ青空の下、洗濯物を干すのを手伝っているとシモンが心配そうに訊いてきた。
――二週間ほど前、大分体の回復した私は置いてもらっているお礼も兼ねて彼らに何か手伝えることはないかと頼んでいた。
初めはみんな要らないと口を揃えて断っていたが、
「何か手伝うことがないと逆に心苦しくなるんだよな。しかも置いてくれてる場所が命の恩人たちの住む所ともなれば」
と言うロダンの言葉で、私はせめてもの役割として家事の一部―主にシモンがやっている―の手伝いをさせて貰えることになったのだった。
どうやらシモンはセシル曰く物好きらしく、魔術で簡単に解決させれば良い家事も全て手ずからやっているみたいだった。
――お陰で仕事を見付けられたのは良かったが。
セシルじゃないが、私も彼が相当物好きな気がしてならない。
――こうして、毎日やれる事が見付かったのは良かったが眠れない日が何日も重なり過ぎたみたいだ。
倒れそうなのを必死に堪えているものの、それがまったく意味を成さないほど目に見えて分かってしまうらしい。
シモンの瞳は心配気な色を浮かべていた。
けれど今まで沢山お世話になっているのにこれ以上迷惑を掛けるのは申し訳ない。
そんな感情が働き、その場は大丈夫という意を込めた微笑みを返して私は残り少しになった洗濯物をさっさと片付けたのだった。
◇◆◇◆
『ダッド、アタシだよ! 例の子について話があるんだけど』
ミリアおばさんは―多分座長のものなのだろう―名前を呼びながら、あるひとつの扉を叩いた。
すると中からすぐに低くて太い声が返ってきた。
『おう、ミリアか。勝手に入ってきてくれ』
その声を聞くとミリアおばさんは少し離れた位置に立っていた私を手招きし、そのまま扉を開けて中へと入っていった。
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