― 悪夢 ―

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ミリアおばさんに続いて私も扉をくぐる。 ――中は先ほどまでいたミリアおばさんの部屋の倍の広さはあった。 応接室的な場所なのだろうか。 中心には、長テーブルを挟んで向かい合わせに革張りの4人ほど座れそうなソファが設置されている。 その左側のソファに先ほどの声の主らしき人物が座っていた。 焦茶色の短く立った髪、同色の瞳でガッシリとした体のミリアおばさんと同じくらいの年齢の男。 こちらに向けられた目つきは鋭く、妙に威圧感が感じられた。 私はその視線が怖く、思わずミリアおばさんの服の裾を掴んで後ろに隠れた。 『そいつがお前が拾ったって言ってた例のガキか。で、そいつに関して何の用があるって言うんだ? 手短に済ませな。これから次の舞台について交渉があるんだからな』 その男、座長らしき人は私のその行動には気にも留めず、ミリアおばさんにさっさと用件を済ますように促した。 『ああ、ちょっと相談があってね。 この子をここで引き取らないかい?もちろん面倒はアタシがみるからさ』 『……は? 何を言ってるんだ。俺はお前が後で孤児院やらどこへやらやると思ったからこそ、そのガキを拾うのを許可したのであって、厄介者を増やすことは許可していねぇぞ。 もし、ここに置きたいと言うならそのガキは何か金になるような芸が出来なくちゃならねぇ。何かあるって言うのかよ』 座長はミリアおばさんの提案に一瞬呆気にとられたが、すぐに反対の意を示した。 けれどそんな座長の言葉にミリアおばさんは軽く片目を瞑り、軽快に返した。 『もちろん、役割は与えるよ。アタシの楽器に合わせて歌ってもらうんだよ。 なぁに、大丈夫だよ。この子は良い声しているし、すぐに売れっ子になれるさ』 『…………。    え?』 今度は、私がミリアおばさんのその楽観的な言い方に後ろで裾を掴んだまま絶句する番だった。
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