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『――なら、そんなに言うなら一週間後にテストでもやろうじゃねぇか』
座長はしばらく悩む様に考え込むと、そう切り出した。
そしてニヤリと笑んで続いた言葉には、流石のミリアおばさんも驚きの表情を隠せなかった。
『丁度、一週間後には舞台公演が予定されてるしな。
そこで客に判断してもらおうじゃねぇか。
――そのガキが必要かどうかを……な』
――必要
その言葉を聞いた途端、アノ日のことが突如、脳裏をよ切った。
《もう……終りだ》
絶望に支配され、狂ってしまった父が目の前に立っていた。
彼は虚ろな瞳で私を見ている。
――手には小さな鎌を持って。
そして――
ゆっくり、
ふらふらと、
だけど確かに一歩ずつ踏んで近付いて来る。
毒となる言葉を呟きながら……。
《お前が生まれてからだ…こんなに生きるのが苦しく感じる様になったのは》
《お前なんて要らない》
そうして私の目の前でピタリと足を止める。
私は、普段あれほど可愛がってくれていた父に言われた言葉のショックが大きく、動けないままゆっくりと父を見上げた。
右手に握られた小さな鎌が、ゆっくりと持ち上がっていく。
それでも、動けないまま。
ジッと父の顔を見つめる。
しばらくして――
頭上高々に上げられた鎌が
振り下ろされて
《アレンッやめて――!!》
―ヒュッ!!
目を瞑った私の耳に届いたのは、振り下ろされた鎌の風を切る音と、それと同時に響いた母の声だけだった。
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