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突然聞こえたミリアおばさんの怒声に、一気に現実に戻される。
それでもしばらくボーッとしていたが、すぐに頭をぶんぶん振って無理矢理現実に意識を戻した。
丁度それが運悪く座長に見られ、どうやらそれがミリアおばさんの言葉に同意しているように見えたらしい。
座長は私を睨みつつ言った。
『ここは子供の遊び場じゃねぇ。日々自分で稼いだ金で暮らすだけで精一杯なところなんだ。
食うためには人に頼ってちゃあ邪魔になるところなんだよ!』
私は座長の怒ったような声音にビクリと震えた。
ミリアおばさんは庇うように私の肩を抱く。
『何もそんな風に言わなくとも……まだ子供だよ』
『子供だろうと居るならばただの穀潰しはここにはいらねぇ。
とにかく、一座に置きたければ一週間後の公演を成功させることだな。
――話は終わりだ。そろそろ出ていけ』
『――あいよ』
おばさんは最後に返事をすると、私を連れて部屋を出た。
『仕方ないね……』
おばさんの部屋に戻る途中、おばさんは呟いた。
そして、私の方を向いて言った。
『歌をみっちり教えてあげるから一週間でマスターするんだよ。そうすればここでアタシと一緒に暮らせるんだからね!』
(あれ…そう言えば私、この人と一緒に暮らしたいなんて言ったっけ……?)
ミリアおばさんの言葉にふと、そんな疑問が頭に浮かぶ。
けれども私は勢いに圧され、
『うん』
と素直に頷いたのだった。
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