これが最後の

2/3
前へ
/90ページ
次へ
今日は夏祭り。来るつもりはなかったんだけど、千帆と瀬南がどうしてもって言うもんだから来てしまった。 人混みは苦手だ。だけど、屋台を遠くからぼーっと見つめるのは、なんだか好き。 思い出すんだ、あの日を。 ってか、あの二人遅いなぁ… 待ち合わせ時間は確か、7時。で、今は7時半。もうここであの二人を待って30分が経つ。 待ち合わせ場所から見える祭り場の灯りはキレイで、やっぱり好きだなって思う。 「…ん?」 祭り場から少し離れた所でキョロキョロとしている浴衣の女の子、見たことがある。 というか… 「…あかり?」 俺がそう呟くと、聞こえたかのように振り向く浴衣の女の子。 「あーっ、翔太っ」 「…あ、久しぶり」 「本当に久々だね、元気だった?」 笑顔で話すあかりは全く変わってなくて、またあの日の気持ちが溢れる。 ああ、まだあかりのこと好きなんだって思った。 「ってか、翔太一人?」 「や、瀬南と千帆を待ってんだけど」 「へ?さっきまで二人といたんだよ」 「…え?」 あかりの話によると、千帆と瀬南と一緒に祭りに来ていたらしい。そして二人でかき氷を買いに行ったっきり帰って来ないとか… 完全にハメられた。 「かき氷食べたいのに~、迷子になったのかな?」 未だ瀬南たちの姿を探してるけど、きっと見つかんないよ、あかり。 「翔太も一緒に探そうよ」 「…待って、」 「?」 ─これが最後の─ (チャンスだと思うから) 千帆たちとはぐれたなんて嘘。 ウチが翔太に告白したくて、千帆や瀬南に手伝ってもらっただけ。 いざ翔太を目の前にすると言えなくて。 だって、ウチより背が高くなってるなんて、こんなにカッコ良くなってるなんて、聞いてない。 なんだか恥ずかしくて、千帆たちを探しに行こうなんて言っちゃった。 すると、翔太に腕を掴まれた。 …期待してもいいのかな? おわり
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

131人が本棚に入れています
本棚に追加