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「おはよ、透」
春菜だった。
神裂は緊張を解き、挨拶しながら時間を確かめる。
「六時半……早くないか? というか鍵はどうやって開けたんだ」
瞼が勝手に下りてくるため両目を擦り眠気に耐える。
「合鍵をお母さんからあすがってるんだ。透は、よく寝坊してたでしょ?」
制服のスカートのポケットから鍵を取り出す春菜。
(……こいつも高ニの女なのに普通に入ってこれるんだな)
まあどうでもいいけどと呟き、そういえば、
「学校は八時半からで、モノレール乗ったって二十分ぐらいなのにか」
これから通う学校は人工島にあるため、通行手段はモノレールが一般であることを思い出す。
ついでに欠伸をしながらとりあえずカーテンを開けた。
「いろいろ話す事あったから……迷惑だった? ごめんね」
長年の付き合いのせいだったからわかることで、春菜は本当に反省すると涙目になり顔を下に向けてしまう癖があるのを神裂は覚えていた。
それは小動物的可愛いさがある。
「気にしてないよ」
なんだか無駄に罪悪感が湧いてきたので、とりあえず頭を撫でてみる。
十年前はこうしていたからだ。
「ぅ……ありがと」
効果は抜群のようだ。
「下に来てね。朝ご飯できてるからさ」
嬉しそうに春菜は下に降りて行く。
神裂はしばらく外を眺めて、ゆっくりと階段を降りた。
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