帰ってきた場所

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「――でね、この学校がここにできたの」 場所は既にモノレール内。 人の数は人工島に行くのに作られたモノレールのため学生が多い。 『次は、輝陽学園前ー、輝陽学園前です。御出口は右側です』 「あっ、降りないと」 神裂は頷き電車を降りた。 ちなみに春菜の説明は半分も聞いていない。 東京駅のようにレンガで作られた駅から出て、辺りを見渡す。 まだ登校時間ではないせいか学生の数は少なかった。 駅から五分ほど、同じ色のレンガでできた道を歩き、校門に着く。 「これが輝陽学園か。確か中高一貫だったな」 人工島のほぼ全てをうめ尽くす輝陽学園。 その総面積は、尋常ではない。 高等部は人工島の三分の二(校庭、体育館など含む)を占めており、校舎は部活棟と教室などがある本校舎の二つ。 どちらも四階建て、玄関ホールを中心にコンパスを最大まで広げたような形になっている。 屋上にはソーラーパネル、人工島の近くの海にはお隣の学園と共同の風力発電機がある。 「うちの学校の面積は、関東一なんだよ」 春菜が自慢げに豊かな胸を反らす。 そこで神裂はあることに気がついた。 (周りから視線を感じるのは気のせいか? 俺ではなく春菜にだけど……) よく耳をすます。 「あの春菜さんが……」やら「まじかよあの男、死ぬ気なのか!?」 とか聞こえる。 だが、当の本人は気づいてない様子で神裂に学校の話を続けていた。 (わざと……なのか?) 結論から言うと、春菜がどれほどの人物なのかはまだ神裂は知らなかった。 この日の出来事が大きな事件――に繋がっていくのだが、それはもうしばらく後の話である。
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