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彼の名は神裂 透(かんざき とおる)
福岡の親戚の勧めで東京に戻って来た高校二年生。
体格はだいぶ細長いが芯の強そうな雰囲気と、淡い黒と若干の茶が混じったような色と脳天に髪が少しばかり跳ねてるのが特徴だ。
顔は整っており、一歩間違えたら女性に見えなくもない容姿をしている。
――そんな神裂は空港から出て港区周辺のとある駅にいた。
時刻は既に夜の七時。
不幸続いてか人身事故が起きたり、久しぶりの都会に戻って迷ったりしたのが(若干方向音痴)原因で到着が遅れてしまい時間をかなりオーバーしてしまった。
「ずっと待っている……なんてことはさすがにないだろうな」
一応、東京の古い友人に遅れる有無をメールしておいた。
ズボンのポケットに入っている携帯電話を出して二十分ほど前に届いたメール内容をもう一度見る。
『七時に南常波台駅に来て』と書いてある短いメール。
そしてここが南常波台(みなみときわだい)駅。
時間が時間で人は多く、久しぶりの人の流れにJポップを聴きながらボーッとしていると、
「あ、もしかしたら!」
南口から、慌てているのか人にぶつかりながらやってくる人影が。
どうやら学生らしく、緑のラインの入ったブレザーに短いスカート、肩の辺りまで伸ばした栗色の髪に型の古いカチューシャをしている女の子だった。
「……………春菜か?」
神裂はイヤホンを外し、首を傾げてメールをした古い友人かどうかを確認。
一瞬、人間違いかと思ったが、あのカチューシャには見覚えがある。
だが彼女を最後に見たのは十年前の羽田だ。
微妙に面影はあるにしても、容姿はだいぶ変わっていた。
神裂の頭一個分低く、母親がハーフのためスレンダーな体格は、小学生の時とは比べ物にならないぐらいで目の置場に困る。
十年前よりプラス百二十パーセントとほど上乗せされていたからだ、胸の大きさが。
彼女はぱっちりと大きい瞳の中にも笑顔を浮かべて神裂の元へ。
「うん! 何年ぶりだっけ?」
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