帰ってきた場所

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彼女の名前は森山春奈(もりやま はるな) 神裂と同じ高校二年生であり幼馴染みである。 とはいえ幼稚園から小学二年、それも神裂が転校するまでのわりと短い付き合いだ。 そんな短時間で二人が親しい間柄になれたのは、時同じ十年前に起きたとある事件がきっかけなのである。 同窓会などで久しぶりにあった友人がまるで別人になっていた、なんて話はよくあることで神裂と春菜も、お互いの成長ぶりに少し気まずい空気になっていた。 「…………………」 幼少のころは、兄妹のようにじゃれあって歩いていたのに、現在は人が一人なら間に入れるぐらいの距離感である。 神裂は十年間の時の流れは大きいということを実感した。 ちなみに春菜と神裂は、南常波台駅を出て彼女の家に向かって歩みを進めている。 「………ねえ」 気まずい空気に痺れを切らしてか、春菜が話しかけてきた。 「ん?」 だが神裂と目が合うと黙ってしまう。 これをさっきから五回繰り返している。 「……元気だった?」 「ああ」 「大変だったね、今日」 「そうだな。本当はもっと早くに着けたんだけど」 実は内容も五回繰り返している。
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