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彼の両親は十年前に亡くなっていて、幼い少年だった神裂は両親がどんな人間だったかなど覚えているはずもない。
春菜の両親や親戚に聞いてみたこともあったが、言葉を濁されるばかりで確証を得ることはできなかった。
ただ研究者であり、十年前の事件の際に神裂を助けるために死んでしまったことは分かっている。
「…………眠い」
急な睡魔。
神裂は重たい足で風呂に向かい、速攻で上がると自室のベッドで寝てしまった。
カウンターに乗っけたままのⅩⅢて彫られた携帯電話。
その隣の封筒には春菜の母親からの手紙とは別に、黄ばんだメモのような紙切れがあった。
そこには――、
「あとは頼むぞ」
とだけ書いてあった。
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