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けど手が触れ合う前に、邪魔が入った。隣に住んでる匡ちゃんや。
匡ちゃんは俺より3つ年下でバリバリの運動部で、そういえば今日合宿から帰ってくるとか言うてはったっけ。多分手元の重そうな荷物はそれやろな。
イズとも知り合いで、だけどまだ死んだことは知らない。というかものっそ玄関覗いてるのに、何でイズに何も言わへんの?
そして次の瞬間思い付いた仮説を確かめようと、嘘を吐いた。
結果、俺の仮説が正しかったことが分かった。
それは、イズは俺にしか見えへんということ。
コンビニに行く必要は無くなって、俺はイズが幽霊なんやということを、再度確認した。
したらイズは、「彼女だった」と言いおった。「だった」?ふざけるな。
俺にとっては今もまだ、もう一度会えた今も、彼女やのに。
それをイズに訴えたら、泣きそうな顔をされた。あかん、苦手なんや、女の涙は。そう思いながら俺はしゃがんで、両腕を伸ばした。そしてイズからも両腕が伸ばされる。
死んでも好きな、彼女。俺にしか見えへん、イズ。
自分勝手やけど、えらい独占欲が満たされた気持ちやった。
けど、抱き合うことは叶わんかった。そしてイズは今度こそ泣き出した。その涙さえ、途中で消えた。
また俺の手がイズを貫通するのはお互いに堪えられへんと思って、包むように、だけど触れはせんように、俺は自分の腕を回した。
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