第Ⅲ話

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  *  *  *  手伝うこともどうせ出来ないけど一人でソファーの上にいてもやることは無いから、ダイニングへ行ってみる。開いたままだったドアからちらりと頭だけを出してみると、ひーちゃんがテーブルに皿を置いているところだった。 「ひーちゃん」  聞こえるか聞こえないか位の声で呼んでみた。するとひーちゃんはひょいと顔を上げて私を見て、「どしたん?」と訊いてくれた。  ……少し、きゅんと胸が痛んだ。  「何でも無い」と言うと「何やねん、呼んだだけかい」と苦笑して、おいでと言って椅子を引いてくれた。それからキッチンに戻りながら、 「イズ、一応訊くけど……朝食はいるん?」 と、あくまで向こうをむいたまま。  だから私はその優しさに心の中で感謝しながら、 「いらないよ、ひーちゃん」  背中に向かって、返事をした。   *  *  *
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