第Ⅲ話

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  *  *  *  ひーちゃんの運転するバイクの後ろに乗って、しがみつくふりをして学校まで行った。  私は、私に出来た速さでしか歩けないからそうやって行ったわけなんだけど、よく考えたら、ドアっていう『もの』はすり抜けたくせにどうしてバイクって『もの』には乗れたのか、不思議だった。  学校に着いてバイクを置き、教室に向かう途中、ひーちゃんにそう言ったら、「俺も気になっとったところなんやけど」と小声で返してくれた。それから、続きはまた後で、と。  そうだった。  他の人には私が見えないから、ひーちゃんと私は普通に会話してるつもりでも、周りから見たらひーちゃんは一人で話しているアブナイ人ってことになってしまうから、私たちは家を出る前に、会話は(ひーちゃんは)筆談で、と決めていたんだっけ。  むぅ、次から気をつけなくちゃ。そう思ったときだった。 「おい、佐古」  ひーちゃんに、声がかけられた。その相手は。 「片桐やん」  私の幼馴染の、片桐くんだった。  高校が一緒だったから、ひーちゃんとも面識があるんだけどね。
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