第Ⅲ話

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 *  *  *  授業は、決して楽しくはなかった。当たり前かもしれないけど。  それでも、もうこうしてノートを取ることも『当たり前』では無くなってしまったんだなぁと思うと、あれだけ退屈に思っていたものから逃れられた安心感よりも、なんだか惜しいような気持ちになるから不思議だと思う。  そうそう、ひーちゃんは、さっきの『どうしてものに触れるのか』という疑問についての考えを、ノートの端に書いてくれた。  それによると、私の意識次第、らしい。例えば、私が『私は床の上に立っている』と無意識の内に思っているから、私は床にのめり込んでいなければ浮いてもいないし、自分が幽霊で、幽霊はものを通り抜けるものだと思ったから、ドアを突き抜けたりするんだって。  あくまで俺の想像やけどな、と付け足したひーちゃんに、 「じゃあ、その気になれば私はひーちゃんにも触れるの?」  と私は思わず訊いた。けど、それに対しひーちゃんは、 『かもしれへんな』 とだけ、苦笑しながら書いた。  私はそれを読んで、いざというときは頑張ろう、と思った。もう死んでる私に『いざ』って時なんか来るのかはわからないけれど。   *  *  *
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