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授業は、決して楽しくはなかった。当たり前かもしれないけど。
それでも、もうこうしてノートを取ることも『当たり前』では無くなってしまったんだなぁと思うと、あれだけ退屈に思っていたものから逃れられた安心感よりも、なんだか惜しいような気持ちになるから不思議だと思う。
そうそう、ひーちゃんは、さっきの『どうしてものに触れるのか』という疑問についての考えを、ノートの端に書いてくれた。
それによると、私の意識次第、らしい。例えば、私が『私は床の上に立っている』と無意識の内に思っているから、私は床にのめり込んでいなければ浮いてもいないし、自分が幽霊で、幽霊はものを通り抜けるものだと思ったから、ドアを突き抜けたりするんだって。
あくまで俺の想像やけどな、と付け足したひーちゃんに、
「じゃあ、その気になれば私はひーちゃんにも触れるの?」
と私は思わず訊いた。けど、それに対しひーちゃんは、
『かもしれへんな』
とだけ、苦笑しながら書いた。
私はそれを読んで、いざというときは頑張ろう、と思った。もう死んでる私に『いざ』って時なんか来るのかはわからないけれど。
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