キツネとタヌキ

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太陽は沈む直前。学校全体を茜色に染めあげるそれが大体の時間を知らせる。この日は部活が早く終わった。なんでも緊急で職員会議があるとか。しかし、そんなことは生徒にしてみれば関係ない。だから沙織も帰宅――するはずだった。しかし、彼女には帰宅という選択肢がないのだ。 納得できなかった。ただそれだけ。千草が言いかけたこと、それがどうしても気になる。あの場は確かに明日香によって収められたのだが、真相は聞かなければならない。千草とヤドカリの関係を。 そのチャンスは着替え終わりみんなが帰宅する今しかなかった。今度は周りに誰もいないところで話せば迷惑がかからない。そう思い校門で千草を待つ。 ――が、五分待っても十分待っても千草が現れない。確かに更衣室を出る時に残っていた……はずだったのだが。 「すれ違い……?」 最悪の事態が頭の隅をよぎる。いち早く知らなくてはならなかった。知ってどうするかはわからない。でも彼女に劣るような関係であるなら私は――。 「アナタそこで何やってるの?」 「――ふぇ! あ! あぁ……」 不意に声をかけられた。自分の世界に入っていたためにそいつを視界に入れることができず、気がつくのが遅れた沙織。その声は正真正銘畑山千草によるものであった。 「……」 周りを見渡せば千草の横には千草の友達であろう子もいた。沙織の目には彼女はとても焦っているように見えた。無理もない。先ほどの大ゲンカを見ればその再現とも思えるこの状況。 「何? 用がないならウチは帰るよ」 帰ろうとする千草。しかし、沙織はそれを手で制す。 「ちょっと! さっきの話、まだ終わってないんだけど」 千草は沙織の言葉を聞いて「はぁ」と一つため息をついたあと沙織を無視して陽子の方を向く。 「ごめん、陽子、先に帰っててくれる?」 「え?」 陽子は少し驚いて、沙織に目をやり少し悩む。悩んだ後に千草の言葉を受け入れた。 「うん、わかった」 そう言って陽子は学校を後にした。 「さて、ここで話するのもアレだから別の場所に行こうか」 陽子が見えなくなるまで見送った後に千草が口にした。沙織はその言葉に口は開かないものの頷く。そして沈みゆく夕陽を浴びながら二人は学校近くの公園へと移動した。 公園に着いた時には空には星も輝き出していた。まだ明るいまでも段々と闇を手に入れようとする空。
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