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サイがいろいろ考えていると不意にウサギの声が耳に入った。
「あっ。そうだ、サイ! あとで話があるから昼休み空けといてー」
一人の世界から抜け出したウサギは手をポンと叩くポーズをしている。
「ん? 昼休み? スマン、昼休みは先約が入ってるんだが……」
「ふーん……そう」
ウサギは顔を(¬_¬)にしながら少しすねている。
「何さ? ウサギ、何か勘違いしてない?」
「いや、サイはまた女の子たちといちゃいちゃするのかーってさ」
サイは最近昼休みになると、生徒会室に行って上級生たちと今後の行事などについて話し合いをしている。その上級生は生徒会長の大井以外は全員女子。こうなったのもすべては運のなさから始まったことであった。
サイはこれでいて学級委員である。その理由には当然のようにウサギが絡んでいる。それでなければサイには縁のない委員会なのだ。
そして二週間前のこと。学級委員会で各学年の学級委員の代表を決めようということになった。なんでも、これからいろいろと生徒会との話をつけるのに各学年の意見が必要だとか。そして、その時に次の週までに各学年、話し合って決めておくように、ということになった。だが、あろうことか一年生はその代表決めを忘れていたのだ。そのため、次の週になりその場でジャンケンで決めようということになった。そしてあとは想像通りである。八人のジャンケンでサイがまさかの一人負けをしたのであった。
「違う、違う! 断じて違うぞ! 俺は仕方なくだな――」
「はいはい、わかったよー。とにかく早く話がしたいから放課後でいい?」
「放課後はいいけど……」
――絶対にわかってないじゃんか……。
サイはウサギに聞こえないよう最後にポツリとつぶやいた。しかし、その声はウサギの耳に達したらしく
「なんか言った?」
と顔にお怒りマークを二、三個つけて反論された。そんなあと少しで本気で怒りそうな相手に対しサイの口から出た言葉、それは弱々しかった。
「い、いえ! 滅相もない」
それはまさに王様の言葉に従う家来のような一言。ウサギとサイにはこの瞬間、見えない壁が生まれた。もちろんそんな壁など一時的なものにすぎないのだが。
「――そっ。まぁいいや。じゃあ、放課後に校門でねー!」
「放課後、か……」
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