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恐らく納得していないであろう母親以上に納得がいかなかった。自分を慮って母親はあんな言葉を掛けない。息子が青少年保護育成条令違反になるのを危惧しているのだろうか。
いや、そんな程度の話ではない。
母親のあんなにも何かの感情が篭った目を見たのは初めてだった。
母親は静かな人だ。喜びも悲しみも怒りも、あらゆる感情を本当に小さく表現する。しかし先程の母親は何かの感情を腹に抱え込んでいた。それが溢れていた。焦り、戸惑い、怒り、嫉妬、憎悪、恐らくその類の感情に。どれかは分からなかった。ただ確かなことは母親は、その何かの感情をひどく怖れていた。そう感じた。窓を叩く音がした。無数の水滴が窓を汚していた。リリーは、傘を持っていたのだろうか?
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