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ただ、従うしかなかった。
強制ではない。
ただ、従うしかなかった。
逆らうことなど分からなかった。
思いつかなかった。
手段がなかった。
しかし手段を得たとしても、恐らく何もしなかっただろう。
何をしているのか、自分が何なのか、何故ここに居るのかも分からなかった。
ただ、尋ねていた。
時には著しく脂肪のついた体の生き物に、時には禿げた頭の生き物に、時にはまだ性を知らない性器のついた生き物に。
私はいくらですか?と来る日も来る日も、尋ねていた。
意味は、なかった。
だってそれしか言葉を知らなかったから。
今では沢山の言葉を覚えた。
でも変わらない。
いくら言葉を覚えようと、役に立たない。
その言葉は意味も、意思もないもので意味不明の記号みたいなものだから。
そして毎日、別の生き物に尋ねている。
私はいくらですか?、と。
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