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「さてと、冗談はここまでにして、そろそろ来るようですね」
ーーさっきまでのは、冗談だったのか?
冗談にしては質が悪すぎるぞーー
ずっと黙って見ていた怜は思わず、そう思ってしまった。
「来るって何が?」
背の低い男が、沖田に聞く。
「わかりませんか?永倉さん。
そろそろ近藤さん達が来るって言ったのです」
背の低い男ーー永倉は、驚いて微かに目が開く。
「近藤局長が?珍しいなぁ」
「近藤さんだけではないですよ。
土方さんも山南さんも来ます」
沖田の言葉に永倉は何かに集中するように瞳を閉じる。
「ーーああ、本当だ。来るね」
彼は納得して、頷いた。
「なんで来るとわかるんですか?」
何も感じることのできない怜は沖田達に聞いた。
「怜さん、聴こえませんか?」
沖田が意外そうに聞いた。
てっきり怜も気づいていると思っていたようだ。
「?」
怜は首を傾げる。
音なんて全然聞こえないじゃーー
今、聞こえた。
複数の足音がこちらに近づいて来ている。
微かにだが、話声も聞こえてきた。
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