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「そうでしたっ❗試合をするために来たんでした❗」
沖田はすっかり忘れていたらしい。
「怜さんほらほら立ち上がって💦
この程度でへこたれていては駄目ですよ♪」
沖田はずりずりと怜を立たせる。
ーー誰のせいでこんなんなったと思ってんだ⁉ーー
本当はそう叫びたかった。
しかし、沖田という人物を会って数時間しか経たないが大体わかってきた怜はそんな言葉は無駄だと理解していた。
「……もう、どうにでもしてくれ……」
もう投げやりに呟く。
その姿はあまりにも気の毒だった。
「怜さん怜さん、木刀と竹刀どっちにします?」
沖田のテンションは憎たらしいほど高い。
「沖田さんの好きな方で……」
対して怜の表情は暗い。
「朝木君、その調子で大丈夫なのかい?」
その様子に心配したのか、山南が不安そうに聞いた。
「……大丈夫です。
それに僕は沖田さんに、試合で覚悟しておけと言ったんです。
それなのに約束を違えて試合をしないとなると僕のルール……というか“信条”に反しますから……」
淡々と怜は語る。
ーー僕は自分で決めた約束は守るようにしている。
だけど、それは信条なんてカッコいいものではない。
ただ、自分自身を保つためのルール。
ルールで己を縛らないと、僕という存在は壊れてしまうような気がするから守っているに過ぎないーー
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