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「“約束を守る”それが君の士道なんだね」
山南は、納得して言う。
怜はピクリと反応して、山南を見た。
「士道……そんな大層なものではーー」
「だが、それが君の生きるための道義なのだろう?
だとしたら、立派な士道だと私は思うけどね」
「……………」
山南の言葉に怜は返す言葉が見つからなかった。
「怜さん。
木刀にしましたよ。
持ってみてください✨」
丁度タイミングよく沖田が木刀を二本持ってやって来た。
そして怜に木刀を手渡す。
初めて持った木刀は重さは特に気にならなかったが片手では持ちにくい上に、どことなく違和感があった。
そのせいか、微かに顔をしかめてしまった。
怜のぎこちなさに気づいたのか沖田は、
「持ち心地が悪ければ、また別のを持ってきますけど」
「これで大丈夫です。
木刀持ったことなくて、ちょっと違和感を感じただけですから直ぐに慣れます」
怜は何度か木刀を握り直しながら言った。
「木刀を握ったことがない?
局長の部屋では竹刀も握ったことがないと言っていたような気がするが……」
もしかして、全くの素人なのかと、山南の脳裏に嫌な予感が走る。
(朝木君は女子だ。
むしろその可能性の方が高い)
この時代の女は余程のことがない限り剣道に進むことはない。
しかし、山南は袴姿の怜を見るとどう見ても少年にしか見えず、すっかりと女だということを失念していた。
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