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沖田は怜を道場の真ん中まで引っ張り、やっと手を離してくれた。
「今さらですけど防具をつけますか?」
沖田は怜に聞く。
「いえ。動きにくくなりそうだからいいです」
怜は即答する。
表情は明るい。
沖田のせいで最悪だった調子もようやく元に戻ってきて、今はもう早く試合がしたくてウズウズしていた。
「わかりました。
永倉さん~!審判お願いしてもいいですか~!?」
沖田は平隊士たちに混じって座っている永倉に声をかける。
「え、俺が?」
高みの見物を決めていた永倉は少々不満そうである。
「さすがに局長や副長たちに頼むわけにはいきませんし、原田さんはまだあんな調子ですから……」
原田はまだ道場の隅で丸くなっていた。おまけに誰からも構われずどこか寂しそうな雰囲気を醸し出している。
永倉はふぅと息を吐くと、
「わ~たよ。
審判する」
意外にすんなりと引き受けて、立ち上り二人の近くに行く。
「試合は実戦形式。
どちらかが、一本とるか降参するまででいいよな?」
確認するように永倉が二人に聞いた。
「はい」
「…………」
沖田は即答する。
怜は、実戦形式の意味が解らずに少し困ったように黙っていた。
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