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「なぁ歳。やばくないかこの状況……」
近藤はおどおどして土方に話しかける。
「……チッ……あいつら……」
土方も難しい顔で試合を見ていた。
彼らの視線の先には、対峙している二人がいる。
一人は息が苦しくなるほどの殺気を放つ沖田。
完全に我を忘れているのは顔を見ればわかる。
対するは構えはいるものの殺気がまるでない怜。
いや、殺気どころか気配も極端に薄くなっていた。
表情は機械的とも見える無表情。
目は沖田を見据えているものの、その瞳に光がなく、感情もなかった。
(あの目だ!)
そう感じた途端、土方の背筋にゾワリと悪寒が走る。
知らず知らずのうちに手のひらに指が食い込むほど握り締めてしまう。
土方にとってはあの状態の沖田よりも今の怜のほうが危険なモノに見えた。
土方は二人から目を反らし自分の横を見ると、いつの間に復活した原田が食い入るように試合を見ていた。
「原田……」
ボソリと、土方は呼び掛ける。
まさか声を掛けられるとは思わなかったのか原田はびくり、と大げさに反応する。
「ーーな、何ですか副ちょーー!!ーーん゛ぐぅ!ーー」
原田は思った以上の大きな声をだしたので、土方は慌てて口を塞いだ。
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