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「…………」
土方はいつもとは違い、優しい口調で語っている。
だが、原田にはそれが無性に怖かった。
頼むと言っておきながら、完全に脅しだし、
なにより、土方の目は笑ってない。
言葉には出してないが、目が“従わねーんなら、切腹させんぞ!”と語っている。
どのみち原田に選択肢はなかった。
「………わかった………ぐすん……」
何だか涙がでてきた。
沖田と怜は未だに対峙していた。
もうどれほどこの状態なのかわからない。
だが、両者とも動かない。
隙が見当たらないーー
怜は、頭の片隅で思う。
人は集中していればいるほどどこかで途切れるもの。
それが隙になるのだが、沖田にはそれがない。
先ほどから外野がごちゃごちゃと煩いが、沖田に全神経を集中させている怜の耳には届かなかった。
「いつまでそうしている気だ?」
沖田は怜に話しかけるが、話しているときでさえ隙はなかった。
「………………」
怜は、答えない。
「まぁいいや。動かねぇんだったらこっちから行くぜ」
沖田は打ち込んでくる。
†
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