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「う……うう……部屋隅って誰だよ……
一文字もあってないじゃねーか……うう……」
ついに泣き出す原田。
あまりに可哀想で、怜は原田の近くにしゃがんだ。
「……間違ってしまってごめんなさい……あの、貴方の名前は……うわっ!」
声をかけたら、原田はがばりと顔をあげる。
それはいい。
それはいいんだけど……
「うわ~💧」
怜はこれ以上何とも言えなかった。
原田は本当に泣いていた。
顔はもう涙やら鼻水でぐしゃぐしゃ。
額は赤くて痛々しい。
こんなこと思ってはいけないことなんだがーー
ーーキモい。
と怜は思ってしまった。
大の男が泣くとこんなに気持ち悪いものだとは思わなかった。
怜は、ドン引きしてしまう。
「……うう……俺ってば、こんなに優しくされたの、久しぶりだぁ……」
原田は怜がドン引きしているのに気づかなかったようで、ぐじぐじと着物の袖口で涙を拭いながら上体を起こす。
ーー優しくって……僕はただ声をかけただけなんですけど……ーー
「……俺は原田左之助……お前って異人だけどすっげ~優しいな~」
と本当に嬉しそうに言い、ギュウと怜の両手を握り込む。
ーー泣き止んだけど、これで手を振りほどいたらまた泣くよな。
泣かれるとキモいから、
それならしばらくの間手ぐらいいいかーー
それで仕方なく怜は握られたまま大人しくしていた。
ガッ!
「いてぇ!」
原田は突然手を離した。
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